赤松林太郎のプライベートレーベル、早くも第3弾が配信される。今回も、心の赴くままに紡がれた詩（うた）が、精妙な計らいでもって、あるべき位置に降りてくる。そんな趣の詩集となった。
デジタル配信を謳いながら、０と１との合間にこまかに揺れる、このうえなく愛らしい風合い。馴染みのベートーヴェンやラヴェルから、グリエール・サン＝サーンス・プッチーニをたどって、平吉毅州・ピアソラまで。一筆で爽やかに描かれてゆく物語は、いつもどおり雄弁でありながら、ここでの赤松はぐっと言葉を抑え、静かに窓辺に立っているようでもある。自宅にしつらえたというこだわりのスタジオで、気の置けない仲間たちと手仕事の時を過ごすうちに、不意に静寂に身を委ねたくなったのだろうか。ふとした揺らぎにぬくもりが満ち、「闘うピアニスト」は、ここでは殊に情け深い。
赤松の淡いテクスチャが、デジタルの意味と温度を変えてゆく。〔加藤哲礼〕